今回ご紹介するミステリー小説は、『火蛾』とあう本になります。
この本は12世紀の中東を舞台に、宗教と神秘に彩られたミステリーを描いた作品です。
メフィスト賞を受賞したこの作品は、壮大なスケールの中に閉ざされた世界と連続殺人事件という緊迫のストーリーが展開され、読者を未知の領域へと誘います。
発売後から文庫化されず、なかなか手に入らないと言われていたそうですが、23年に文庫化され、現在は電子書籍も発売されています。
物語のあらすじ
詩人ファリードが伝説の聖者の教派につらなるという男を訪ね、彼から聞いたのは若き行者アリーの物語でした。
アリーは姿を顕さない導師と四人の修行者が住むという神秘的な山で修行を積んでいますが、そこで不可解な連続殺人が発生します。
閉ざされた穹盧(きゅうろ)という、他から隔絶された環境の中で繰り広げられる事件の数々。
読み手は、アリーとともに謎を追いかけ、驚きの結末へと向かいます。
宗教と神秘が織りなすストーリー
本作の特徴は、イスラム教や神秘主義、ゾロアスター教など、多様な宗教や神秘主義を取り込んだ独自の世界観です。
そのため「宗教的な内容が難しいのでは?」と身構えるかもしれませんが、作者の描写力が見事で、ストーリーが進むにつれて自然と物語の背景に引き込まれます。
細やかな情景描写と丁寧な説明により、中東の文化や信仰が生き生きと感じられ、読み手もまたアリーの目を通して世界を旅しているかのような感覚に浸れます。
アリーの視点から見た謎と疑念
行者アリーの視点も、この物語を魅力的にしているポイントです。
修行の中で、不思議な出来事が起きて行くのですが、それが神の力なのか、幻想なのか、アリー自信も初めはそのような神秘的なことは信じていなかったのに、どんどんと考えが変わっていって行くところが描かれています。
その中での心の変化や考え方の描写も、読者と合わさるところがあり、より物語に没頭していくことができます。
王道から外れたミステリーを楽しむ
本格ミステリーの醍醐味を味わいながらも、伝奇的要素が融合した『火蛾』は、王道とは一味違うミステリーの楽しさを教えてくれます。
読者はページをめくるたびに新たな謎と驚きに出会い、最後までそのスリルを堪能できる作品です。
宗教的背景や歴史的な設定に興味のある方も、純粋に謎解きを楽しみたい方も、一度手に取ってみてはいかがでしょうか?
価格:803円 |